TA INTERVIEWTAインタビュー

TA Interview 01

問題解決のプロセスを学び、
研究者としての一歩を踏み出して欲しい

授業担当教員
生物圏科学研究科教授 西堀 正英(にしぼりまさひで)先生
QTA
生物圏科学研究科博士課程前期2年生 伊藤 文香(いとうふみか)さん
授業名
「研究導入型PBL授業」
(広島大学アクティブラーニングによる研究者養成特別コースプログラム)
どんな授業?

生物生産学部の研究者養成特別コースプログラムは,研究者になることを目指している学生のための特別コースです。学部入学時より,課題解決型の授業(Problem Based Learning, PBL)に参加し,他の専攻の学生より早く卒論ゼミに配属されます。「研究導入型PBL授業」は1年次前期に開講されており,課題の設定,課題に関する情報の収集,解決方法の提示といった,研究者に求められる基礎的なスキルや態度を学びます。この授業ではこれらの能力を,個人だけでなくグループでの協働的な学びを通して形成することを目的としているため,授業の中では繰り返しグループによる課題解決の取り組みが行われます。

http://home.hiroshima-u.ac.jp/risupro/

どのような経緯でQTAになったのですか?

伊藤
私はもともと研究者養成特別コースの1期生で、この授業の受講生でした。2年生後期から西堀ゼミに配属になり、院に進学してから西堀先生のご推薦を受け、QTAを担当しています。

この授業でのQTAとしての役割は?

伊藤
学生が発表した際の質疑応答の時や、ディスカッションで自分たちの意見を出し合うといった相互交流の場面で、学生全員がちゃんと発言できるように働きかけています。例えば質疑応答では,最初の頃はなかなか学生たちから手が挙りません。そういう時に,自分が間に入って、「これってどういうこと?」と質問をすることで、率先して彼らの手本になろうとしています。また、議論が煮詰まっている時には、自分の意見を提示してみたり、新しい視点を投げかけてみたりしています。課題研究の発表の事前指導も担当しています。

QTAとして意識していることは何ですか?

伊藤
一番意識していたのは、先生と学生の「橋渡し」役になることです。1年生は高校までに受け身の授業に慣れてしまっていることもあって、まだ自分の意見をどういう風に述べたらいいのか上手くわからずにつまずくことが多いんです。なので、TAの自分が意見を押し付けず、学生が自分たちで意見を出せるようになるためにどうすればいいか、学生をいかに支援していけばいいかということを常に考えていました。
それから、学生に大学での学びのスタイルを身につけてほしいということも考えています。私自身も大学に入学して感じたことですが、大学では「自分で意見を出して、自分でまとめる」という一連のプロセスが重要になってきます。私がTAとして学生に接することで、学生たちの学びに対する考え方が変わるきっかけになってくれたらいいなと思っています。

授業でTAを導入することにしたのはなぜですか?

西堀
PBLに取り組む中で一番課題として感じたのが、教員が前に立って授業をすると、学生はほとんど教員に頼りっきりになってしまうということです。これではいけない、と感じました。反対に、教員ではなく学生たちの直接の先輩である大学院生が授業を主に担ってくれると、上手く授業が進むという手応えも感じていました。さらに、TA自身も教育に携わることによって、自らの指導に対する責任感が生まれます。伊藤さんが「橋渡し」と表現したように、教員と学生の間にTAが入ってくれることで、3者の関係がうまくいくということを実感していました。そこで、このコースの授業に是非ともTAを採り入れたいと思ったわけです。

TAと共に授業を運営する上で意識していることは何ですか?

西堀
私は、教員・TA・学生という3階層のピラミッド構造を意識しています。教員が直接学生を指導するのではなくて、教員がQTA・PTAを指導し、TAが学生を指導するというピラミッド構造でやっていくと、非常にうまくいくことが多い。その効果は、それぞれの階層で現れてきます。教員側もメリットがあるし、学生側もメリットがある。特にこのコースの学生にとっては、授業でTAが身近にいると「自分も将来大学院生になると、TAの先輩のような立場になるんだ」ということが見えるわけですから、自分のキャリアイメージの形成にも繋がります。TAも人に教えることによって、より自分自身の学びも深めることができます。後輩や高校生から「え、そんなことも知らないんですか?」と言われることで、より学ぼう、事前学習しておこうという動機になる。受講生だけでなく、TAも、そしてもちろん教員もアクティブラーニングすることになる。
TAのことを「お手伝い」だと表現する教員の方もまだまだいらっしゃいますが、私はそうは思っていません。学生が自分で学んでいく、そういった姿勢を身につけるのがこの授業やこのコースの主な目的ですから、その授業を担当するTAにも「手伝ってもらう」という考え方はあまり馴染まないと思うんですね。学生の学びを支援するTA、あるいは学生と共に学ぶTAであるべきだと考えています。

QTAを経験して成長したと思うことは何ですか?

伊藤
自分から積極的に前に出て発表したり、自分からグループの中に入って教えに行ったりという機会をたくさんいただけたので、とても積極的になれたと思います。 TAの業務を負担に感じたことはなくて、むしろ自分の研究にとってもプラスになると捉えています。TAとして教える時には自分の考えを伝えないといけないので、研究発表の練習にもなっています。こういう経験のおかげか、学会で発表の趣旨とは異なる難しい質問をされた時にも、なんとか受け答えができるようになりましたね。

ある日の授業でのTAの動き

授業前
ポートフォリオ(振り返り記録)の添削をしながら,学生に対して前回の授業でフィードバックすることの確認。
学部生のPTAの人と授業準備を進めつつ、先生との打ち合わせ。打ち合わせではその日の授業内容や、どこまで進むのかといった進度を確認する。
授業中
教室には早めに行く。授業開始前、雑談を交えながら、前の授業の内容を思い起こさせたり、事前課題についての話を聴いたりする。
この日は西堀先生が用務で授業開始時刻に間に合わないことがわかっていたので、先生が到着するまでにTAが出欠を取り、今日の授業のねらいを確認し、ポートフォリオを配布しておく。
授業の導入であると同時に、与えられた時間を使って人の前に立ってしゃべる練習をさせるという目的を持った「1分間スピーチ」の実施。お題(最近あった発見や、夏休み開けだったら夏休みに一番ためになったことなど)を1分間で話してもらい、他の学生にはスピーチに対する質問をしてもらう。必ず全員が質問するように促す。
今日のPBLのテーマは「研究者とはどういったものか?」。研究者を目指す学生たちに対して、研究者に必要なものや、そもそも研究者とは何か、といった根本的なことについて考えてもらう内容。先生の指示のもと、小グループに分かれて、研究者に対するイメージや自分が思っていることを、時間を決めて付箋にできるだけ多く書き出してもらう。次に、これらの意見を学生たち自身が「島(共通する項目)」ごとにグループ分けしていき、それぞれの島がどう関連しているのかというストーリーを作る。それぞれの島のつなげ方に悩む学生に対しては、「こういう繋がりも考えられるよね」「こういう視点もふまえて考えてみたら?」という声掛けをする。ただし、そのまま答えになるような意見を言ってしまわないように心がける。
グループワークに入る前に、前回のグループワークとは異なる人が司会や書記などになるよう割り振ることで、学生に多様な役割を経験させる。
ポートフォリオの回収,部屋の片付け。
授業終了後
授業での学生の学習状況の報告と共有。ポートフォリオをもとにして学生の疑問やつまずきを確認する。

インタビューを終えて

「研究者は常にアクティブラーニングをしているのだから,授業でもアクティブラーニングを実践しなければならない」という信念のもとで、階層的TA制度を活用して、教員・TA・学生のそれぞれにメリットがある教育を行おうとされている西堀先生。自身がかつて学生として学んだ授業でQTAを担当し、後輩たちの学びを支援する「橋渡し」役になろうと奮闘されている伊藤さん。コースの在籍者でもあり、指導教員と学生でもある2人の緊密な連携が光る事例でした。
文部科学省によると、アクティブラーニングとは「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称」であり、「発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効」だとされています。

今後は2人の事例のように、大学の授業でも学生の主体的な学びを保証する学びのあり方が求められてくるでしょう。広島大学ではPBLを導入するための支援として、教養ゼミなどの場面で教材として活用できる「シナリオ集」を用意しています。

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これらの教材を使って,学生に積極的な議論を促すきっかけにするのもいいかもしれません。